天使のしっぽ〜過去と未来を繋ぐアニメ〜

天使のしっぽ」を全話見た
なんというんだろう、内容自体よりもアニメ史的な位置づけが面白い作品だった


☆金田軍団
金田伊功というアニメーターがいる。
説明するまでもないが、70年代にその頭角を現し、80年代を風靡した
スーパーアニメーターである。


彼のアニメーション技法は瞬く間に業界に広がったが、
その本流ともいえるスタジオがあった
それがスタジオZおよびスタジオNO.1である
金田伊功直系のアニメーターとしては
鍋島修
飯島正
・山下将仁
越智一裕
の4人が特に上げられる
これにスタジオZ5の亀垣一本橋秀之の2人を加えた6人を
いわゆる「金田フォロワー」と認識している


80年代を席巻した金田スタイルも90年代になると
「時代遅れ」という扱いをされるようになり、
特に90年代後半からは金田スタイルは完全に下火であった


この90年代後半、金田フォロワー達はマニア向けアニメから
漫画原作アニメや子供向けアニメへとその活躍の場を移している。


スタジオぴえろラッキーマンやクランプ学園探偵団などに参加した後、
金田伊功東京キッズに活躍の場を移す。
隠れた金田アニメ「ゲシュタルト」(越智さんがディレクターで金田伊功も原画で参加)
さらに東京キッズ初のTVシリーズ「ヒカリアン」で
金田伊功越智一裕(亀垣・本橋コンビ回、飯島正勝回もある)が「金田アニメ」を作っていた
(「ヒカリアン」のDVDBOX発売しないかなぁ)


ヒカリアンの後の1998年、金田伊功は世紀の駄作「劇場版ファイナルファンタジ−」の制作に入ってしまう


残された越智一裕鍋島修の監督作「とっとこハム太郎」を経て
天使のしっぽ」で初監督となるのだ。
金田アクションから萌えアニメへ。まさに時代の架け橋である
1話の冒頭の電車の作画を見て欲しい。ここには80年代と90年代と00年代が混在している。
この部分と11話の金田伊功パート(青龍の電撃を剣で吸収〜つり橋の党が電撃で壊れる)
だけでも、このアニメの存在した意味があったと断言できる


☆窪田正義(六月十三)から岡田麿里
窪田正義というクリエーターをご存知だろうか
個人的には「モスピーダ」や「メガゾーン」でのメカニック関係の仕事が印象的だが
「センチメンタルグラフィティ」や「卒業」の方が有名かもしれない


天使のしっぽのシリーズ構成はこの窪田氏(六月名義)である
当時の萌えアニメの状況についての彼のコメントが面白いので引用すると


「オタク層の人々は確実なんです。オタクの人たちは男女とも異性に縁がありません。免許も持っていません。必要ないですからね。ファッションにも食べ物にも車にも興味がない。そしたら残ったお金全部アニメに使えるんです。25歳くらいの男性で考えれば月10万円くらいの金額をアニメグッズにつぎ込む。中には同じビデオを3本買う人もいる。客としては素晴らしいです。そういうのを周りが分かってきて各社がアニメに向いてきたんです。
 もう一つの要因はオタクの人口が増えてきたということ。それはベビーブームの20代30代の人たちが沢山存在していることです。今から5年後にはオタク市場にはバブルがくると思っています。20代30代の人たちがもっとお金を使えるようになりますからね。これからはオタク業界かシルバー業界が一番注目を受けるでしょうね」(Video Wave vol.218


天使のしっぽ」の構成はわかりやすく「オタク層」を狙ったものだった。
ただ、この作品の面白いところは、各話の脚本は窪田ではなく、
新人時代の岡田麿里が書いているというところにある。


構成自体がとにかくあざといものになっているが、
その中で岡田が後の作品で見せる「女性同士のコミュニケーション」の巧さを
垣間見る事が出来る。
「ただ可愛い女の子が出ていれば良い」から
「可愛い女の子がよりリアリティをもって描写されるべきである」
という変化への片鱗がこの「天使のしっぽ」には微かながら、確かに感じる事が出来る


平野綾という名のスタア(某ワークスさん風に)
上記の窪田の
「今から5年後にはオタク市場にはバブルがくる」
という予言は的中する。
そのバブルの中心に位置する平野綾がこの「天使のしっぽ」でデビューしている
というのは歴史を感じずにはいられない。


新人ばかり(千葉紗子野川さくらもまだこの頃は新人)の中だと
やっぱりずば抜けて巧いね、平野綾
安定感という意味では、ゆかな・川澄らになんら引けを取らぬ演技である。
まあ他が……というのはあるけどw


☆その他見所など
・演出的には池端隆史コンテの8話がずば抜けて面白い。
・ハムスターのキャラの名前が「くるみ」なのはやっぱり「とっとこハム太郎」からなのだろうか?
・デザインワークスには「バース」の小原渉平さん
・越智監督は、この後の監督作「ポポロクロイス」で伝説の金田回をやってスクエアへ




続編作られてるけど、これ当時は結構人気があったのか?
リアルタイムで見てたら、正直凄くつらかったと思う