なんでアニメでイマジナリーラインを超えると問題なのか。


演出厨二病さんがコメント欄でイマジナリーラインについて
>実写はカメラ複数置いて撮るのが当たり前ですから
>アニメにはそういった制約がないので問題ないと思いました

と言っているのに関して。


まずは、参考として板垣伸のコラムとかおいておきましょう
http://www.style.fm/as/05_column/itagaki81.shtml
http://www.style.fm/as/05_column/itagaki82.shtml


問題はなぜアニメでイマジナリーラインを越えるとまずいということですね。
上のコラムにはそこが書いてないので、
「板垣が勝手に言ってるだけじゃないの?」って思うかもしれない。


ではなぜイマジナリーラインを越えるとまずいか
というと位置関係が分からなくなるからです


言葉だけで説明するのもあれなので、
「切り返しアニメ」ともいうべき「れでぃばと」、その1話の
秀逸なイマジナリーライン越えを見てみましょう。
(DVDをお持ちの方は是非自分で見直して下さい)


問題です。


この二人の位置関係がどうなっているか、わかりますか?
ちょっと考えてみてください




俺は初見の時に

こうなっているのではないかな?って思いました。
あるいは「全然別の場所の二人を映している」
と思う人もいるかもしれません。


では答えを見ていきましょう

このカットで初めて、
それまで「あたかも一人で紅茶を飲んでいる」ような
素振りをしていた伊織(金髪の娘)が
朋美に対して「返事」をします。
そして

このカットに続きます。
ここで、朋美が「まあ、誰かと思ったらフレイムハートさんじゃありませんか!
って白々しく言っているのもポイントですね。
そして答え合わせの

このカットとなるわけです。
そう二人は同じテーブルに同席していたのです。


よって正解の位置関係は

だったわけです。
一応、緑の線イマジナリーラインです。


まとめると
1、わざとイマジナリーラインを越えたカット割りをすること、そしてキャラクターに演技をさせることで
  視聴者に対して、二人の位置関係をミスリードする
2、その上で、「イマジナリーラインを越えない切り返し」と演技の変化(無視から反応へ)によって、
  二人の本当の位置関係を見せる


これがこの場面、このアニメの主軸となる二人の印象的な対面を演出しているわけです。
素直に想像すれば、脚本にこういう「無視→反応」というのがあり、
それをこのような演出で表現したというところじゃないかと思います。


この「れでぃばと」というアニメはタイトルの通り「対決」を意識した作品であり、
ここらへんの「切り返し」を用いた演出が非常に巧い。
他にも、こういうトリックがいくつか出てきます。


それで、話を戻しますと、
上記のようなイマジナリーラインを越えたようなカット割りを
もし演出家が「無意識に」使ったらどうなるでしょう?
おそらく視聴者は位置関係で混乱しまくることになるでしょう。


特にアニメの場合は実写に比べて背景が精巧(リアル)ではない
実写であれば、背景から大体推測できる位置関係も、
アニメの現実ではない背景では
ほぼ推測不可能でしょう。
上の例も背景による位置関係の推測はほぼ不可能でしょう。
モブの顔も適当ですしね
(実写であればモブとはいえ人間がやるので区別も出来る)


そんなわけで、現実のカメラを使っていないアニメにおいても
イマジナリーラインは実写と変わらず「文法」なわけです。