00年代のてきとー作画史観


90年代後半はうつのみや理さんの時代
磯光雄さんにしても大平さんにしても中村豊さんにしても。
金田アクションが陳腐して、うつのみやさんの方法論が主流になった。
同時に作画の冬の時代。
エヴァのヒットの影響は大きい。


00年代になって。
初期の今石さんの登場はやっぱり大きい。
金田復古。
沼田誠也さんがそれに続く。
「最後の」金田系だったはずの渡部圭祐さんも
いまやベテラン。
渡部さんのラインからは椛島洋介さんとか
椛島さんはもちろん大張さんとの関係が大きいけれども、
出身はZ5だということも重要。


そしてガイキングLODからグレンラガン
グレンラガンなどは、多分90年代後半に同じものを見たら
若い人も含めて誰もが「古臭い」と思うかもしれない。
しかし、グレンラガンはある種の「新しさ」と共に受け止められた。
まさに新古典主義


一方、京アニも、まったく別の路線から力を蓄える。
キャラ修正の徹底というのはともかくとして、
歴史に埋もれていたはずの木上さんのサルベージに成功したことは大きい。
木上さんのツメの巧さは、丁寧に枚数を重ねることとしか伝わって無かったようにも思うが。


おっと、その前に松本憲生さんと竹内哲也さん。
TVシリーズの覇者。
覇権アニメーター。
アニメ乱造の時代に質の低いアニメが増える中、
圧倒的な質と量でTVシリーズを支えた。
この二人は明らかにうつのみやさんの系譜だった。
うつのみやさんの系譜はうつのみやさん本人も含めて、
遅筆のアニメーターが多かっただけに、
脅威的であった。
(反対に金田系アニメーターは仕事が早い傾向があった)


2006年の「よみがえる空」あたりから竹内哲也の仕事量が落ち、
代わりにTVシリーズにはWEB系の登場となる。
AHOボーイというニューウェーブのまとめ役の登場という意味では
おねがいマイメロディ」も重要。


ガイキングLODを見たときには
西田達三が次のTVシリーズの覇権を取るかと思ったが、
割りとすぐに劇場の方に行ってしまった。
2006年といえば「ドラえもん のび太の恐竜2006」もあり。
松本憲生さん・西田達三さん・夏目真悟さん・枡田浩史さん
と言ったTVシリーズで活躍してた人達が
作画アニメを作ったという印象だった。
2004年の三大劇場アニメの
「やっぱりAKIRAから変わってない」感とは真逆の
興奮があった。


のび竜2006は他にも、00年代になってから「ぴちぴちピッチ」とか「アカネマニアック」とか
わけわからんものばっかりやってた佐々木政勝さんの仕事が凄かった。
TVCMをやりまくってたので、ある意味では広く仕事が知られてたということになるかもしれない。
まあ、佐々木政勝さんはさらに「咲」で「新しいキャラクターデザイン」として
再注目されるわけだから、世の中わからないものだ。


さて、そんな2006年に裏で覇権への階段を昇っていたのが
ご存じ田中宏紀さん。
大塚隆史さんのサイトで「めちゃくちゃ巧くて速い!」
「ついでに後40カットやってくださいと冗談半分で頼んだら受けてくれた」
などという嘘のような話が書かれる。


と言っても、ネット上での注目のきっかけは
「キャベツ」こと「夜明け前より瑠璃色な」だった。
大塚さんのサイトの「田中宏紀」なる人物の記述が発掘されたのも
この時。
そこからは「プリキュア5」「シャッフル」「スクールデイズ」などなど
目立った仕事を連発。
瞬く間に竹内哲也さんの後のTVアニメの覇者となる。


彼の作画まったく作画の歴史の流れから別のところから来たというのが大きい。
りょーちもさんや沓名さんと言ったWEB系の人達は、
松本憲生さんひいてはうつのみやさんからの流れで出てきたと
多くの人が思った。
2007年に作画スレにおいていまざきさんが
その存在を明らかにした新星アニメーター・崎山北斗にしても
「ポスト大平晋也」という作画史的にわかりやすい立ち位置に立つこととなる。
あるいはシャフトで頭角で現した阿部厳一郎さんは
「ポスト吉成曜」を思わせる作画だった。


うつのみやラインで言えば堀口悠紀子さんも忘れちゃいけない。
木上さんの技とうつのみやさんの技の融合。
まさに作画史的に正しいスーパーアニメーター。
「今の振り向き沖浦っぽくなかったか?」とか。


それに引き換え、田中宏紀さんの作画は、
まったく別の宇宙から来たような衝撃があった。
作画オタク系アニメーターが
堀口悠紀子さんについては、偉大なアニメーターを持ち出して
褒めるのに比べて、田中さんについてのそれは全く逆。


事後的な分析で、その源流を木村圭市郎氏、
さらには日本アニメの父・大塚康生氏に見出す事は出来るものの、
そもそもそこまで遡らないといけない作画が
21世紀にもなって出てくる事自体が驚きである。


さて、その田中宏紀さんの仕事も2010年の後半からは
全盛期に比べてちょっと大人しくなっている。
オオカミさん」の3話が一つの区切りだったのかもしれない。


「ブリーチ」や「プリキュア」などの劇場作品の仕事が多くなり、
これまでの覇者と同じように、だんだんとその活躍の場を
劇場作品の方に移していくのかもしれない。
とか考えつつも、なにげに今期もあちらこちらで名前を見るわけではあるが。


そろそろ、覇権の交代もあるのかな。
パッとは後釜が思い当たらない。
もっとも田中宏紀さんの登場だって完全に視界の外からだったんだから
どこでどんなスーパーアニメーターが育っているかわからんし、
アニメを見続けてるしかないわけだ。


さて12時だ、寝よう