のんのんびより2話〜錦織博の距離感〜


のんのんびよりは1話も、
その「圧縮演出」に心打たれたのですが、
2話はさらに俺好みな錦織演出が!


錦織さんは00年代以後は、
オサレ系バトルモノの仕事ばかりが増えてしまいましたが、
私の中ではやはり、
少女革命ウテナ七実回の人!
(参考:http://nextsociety.blog102.fc2.com/blog-entry-2259.html)


シュールなメルヘンこそが錦織さんの本領だと思うわけです。
その意味では、
都会人のメルヘンとしての田舎を描いている「のんのんびより」は
まさに錦織さんにうってつけの題材!
しかも錦織さんは

コンテが脚本から変わって良いと言うと、「監督だからでしょ」と返されますが、僕はコンテマンの時の方が変更する事が多いです。話を変えるのではなくて、状況設定をはっきりつくる事で、その場面のリアクションが変わってきます。

https://twitter.com/nishiki_hiroshi/status/208649553560350722

とご本人もいっている通り、
コンテマンの方が、その演出力をストレートに出してきます。


さて、では、錦織さんの演出の見所はどこか?
それは上記にもある状況設定
さらに限定的にいえば、特にキャラクター間の距離感です。


映像作品では基本的には画面内に登場人物を納めないといけないので、
登場人物の距離は近めになります。
特にアニメでは物理的な制限がすくないので、
アップで多人数を画面に納めることが可能であり、これが多用されます。


しかし、実際の人間には「パーソナルスペース」というものがあり、
誰でも彼でも近くに寄せるわけではありません。
微妙な距離感を付かず離れずしているのです。


錦織さんは、この「微妙な距離感」を状況設定として織り込んできます。


例えば、このシーン

いわゆる普通のアニメの距離感からすると、
「この二人、大分離れているな」と思うかもしれません。
でも、それは良く考えてみればあたり前で、
まだ転校したての蛍は、小鞠に対してまだ距離をとっているのです。


それがはっきりと映像で表現されるのが

このカット。
小鞠が歩きだしてから、歩きだす、というのをたっぷりとみせている。


逆に近すぎるところを表現しているのが

小鞠の驚きも含めて、
これは完全に「パーソナルスペース」に入っているという描写。


それをれんげも自覚しているのか

一旦離れたり。


このシーンは各キャラの立ち回りで、
シーンを構成していっていてどのカットも面白い。
ここでも

蛍は他の3人とは物理的な距離を置いているのも象徴的だ。
このカットなんかは、普通のアニメであればもっとアップの横位置で
やりそうなものだが、
「蛍の泣きのインパクト」や「言い訳する夏海」よりも(夏海の顔すら映さずに)
各キャラの立ち回り・状況設定に重点を置くのが錦織さんらしい演出。



Bパートの蛍と小鞠のデートも、まさに錦織さんらしいシチュエーション演出。

やはり、「散歩」というのはこういった、演出の基本にして究極であって、
錦織さんが日本アニメーションの出身であることを思わせる。


Bパートで特に素晴らしかったのは

このカット。
台詞もないまま、何気なく、蛍と小鞠が二手に分かれるんですよね。
アニメでは二人でお店にいくと、
二人でセットになって動くことがほとんどですが、
カップルでもないなら、それぞれが見たいものを見にいくというのもあるでしょう。


特にこの二人は、方や駄菓子屋の常連である小鞠と、方や駄菓子屋に初めてきた蛍である。
二人の目にはまったく違うものとして駄菓子屋が映っているだろうことを考えれば、
それぞれ別々に動く方が自然な状況設定と言えるだろう。




やはり、錦織さんの演出を堪能するには、
こういった、のんびりとしてちょっとシュールなものの方が良いなぁ。
ドンパチやってるのは派手さはあるんだけど、
それだと、こういう機微の演出が出る幕がないし。



というわけで、錦織演出、堪能させていただきました。