REDGARDENノット!〜ソウルイーターノット10話


ソウルイーターノットのコンテにまさかの松尾衡さん!
サンライズ作品では時々各話コンテでお見かけしますが、
まさかノットにくるとは!
ボンズ作品はゴシック以来かな?


そして、
松尾衡、百合、アメリカ、死、歌とくれば、
連想されるのは、やはり
RED GARDEN



思い返してみれば、松尾さんとソウルイーターノット
ひいては橋本昌和監督は方向性が一致している。


というわけで、故・今敏監督とのRED GARDENについての対談を振り返ってみる。


今 敏監督× 松尾 衡監督 対談 その6
「『RED GARDEN』の演出に見る、演出家・松尾 衡らしさ」
http://web.archive.org/web/20071114075753/http://clappa.jp/Special/79/6/

――『RED GARDEN』で松尾 衡監督らしい演出というと、どういうところになるのでしょうか?

今 敏(以下、今) それはね、もっと女の子が好きな監督が演出すると萌えにいきかねないんです。でも、松尾さんの場合、萌えはないなって(笑)。

私と共通する部分なんだけど、女の子を可愛く描こうとすることと、可愛い女の子に感情移入していくことは同じなんだけど、可愛い女の子を観察することは違うんです。
松尾さんの場合、演出が女の子との間に一枚フィルターを置いて、距離感を最初から最後まで保っているんですよ。


今敏が松尾演出の特徴としている
この「演出が女の子との間に一枚フィルターを置いて、距離感を最初から最後まで保っている」
というのはノット10話でも全編通してあった感覚。


特にそれが顕著だったのが


この食卓のシーン。
カメラがツグミに寄って、感情移入させるのか思いきや、
突き放すような「おいしいです」の暗い棒読み。
続くアーニャのカットも

カット尻でアーニャが「カメラの方向を向く」事で、
視聴者に「第三者」の感覚を与えて感情移入を拒否する。
松尾演出の距離感が如実に現れている。


○女の子同士のベタベタ

松尾 衡
たとえばケイトとポーラのように女の子同士がベタベタしているのって、単に「女の子同士って普段ベタベタしているよね」って思うからなんです。自分としては、あれが気持ち悪いなと思っている。でも、女の子同士は気付いていないから、「あの二人はレズなんですか?」と質問されたら、「だって、君らいつもベタベタしているでしょ」と答える。それだけのことなんですけどね。


百合的な表現に意外なこだわりを見せる松尾監督。
女の子同士のベタベタを「気持ち悪い」と思いながらも
現実に女の子はベタベタしているから、そういう表現をする。


ノット10話でもその「気持ち悪いと思いながら表現するベタベタ」が見られる。
例えば序盤の


こういった描写。
百合ヲタ的には
「せっかく百合百合してるのに、なんでカメラを寄せないの;;;;」
みたいな感じだけど、
松尾さんは断じてクール。



○マイナス1のカット割
http://web.archive.org/web/20071114190355/http://clappa.jp/Special/79/5/

今 カット割は、基本的にマイナス1にしておけば、次が見たくなるように続いていくんですよ。わざと、カットのなかで起承転結をつけないで、起承転で切るとか。もしくは、承転しか描かない。
そういうマイナスを作っておけば、次が気になるから、自然と引っ張られるんです。でも、大抵の人は「はい、このカット終わり」みたいに、カットで完結させてしまう。

マイナス1のカット割もノット10話の多くカットに言えるが、
わかりやすいのは例えばこれ

煙が凄くいい仕事をしていて、
コレが誰なのか、そしてどうなっているかが、
煙が邪魔してひと目では分からないようになっている。
つまり、このカットでは煙が「マイナス1」の役割を担っているわけだ。
(ちなみに、ソウルイーター本編のシドの「眉間に自由の女神が刺さり死亡」
という設定を表現しているカットでもある。)





とこんな感じで、
やっぱり、松尾さんにはまたREDGARDENみたいな作品を作ってほしいなぁ
と思ったのでした。



おまけ
○歌
TARITARI・クレヨンしんちゃんと歌と多用して、
ノットでもやはり歌を出してきた橋本昌和監督。


松尾さんも”歌の人”だった

今敏「実は『RED GARDEN』はオンエアのときに、何回か見ていたんですよ。今回、第1話「さよなら少女たち」から見始めて、ビックリしたのはキャラクターが歌うシーンです。新しいなって思いましたね。一瞬、これは何が始まったんだろうって。


オンエアを見ていたら、DVDのCMで“松尾衡作詞”ってテロップが入っていたんだけど、その意味が、今回第1話から見始めてやっと分かりました。これが元ネタだったんだって(笑)。いやあ、二重に度肝を抜かれました。」


今敏「腰が抜けるぐらい、度肝を抜かれました。あれはビックりする。急に歌いだすんだもの。しかも、同じ歌を違うキャラが、繋げて歌っていくでしょう? 」


あの今敏の度肝を抜いた歌の演出。
そういう意味では、松尾さんが橋本監督の作品に参加するのも必然なのかもしれない。
橋本監督にも、さらなる歌演出で、
あの世の今敏の度肝を抜いてほしい。