今のアニメオタクの鬼門・ルパン三世セカンドシリーズ


dアニメストアやバンダイチャンネル見放題の登場で、
過去の名作にアクセスしやすくなった昨今ではあるが、
その中で鬼門となる作品がある。


それが、ルパン三世セカンドシリーズ、通称:新ルパンだ。


何が鬼門か。
まず第一にその評価である。


今では、ルパン三世といえばまず『カリオストロの城
宮崎駿が監督した名作だ。
そして次にあがるのが『ルパンVS複製人間
こちらは吉川監督のハードボイルドさの光る名作。


そしてテレビシリーズとしてはやはり初代のファーストシリーズ、
通称:旧ルパンの評価がずば抜けて高い。


旧ルパンについては、アニメスタイルにおいても

小黒  で、『ルパン三世[旧]』も基本なんで、全部観てほしい。
   作画も勿論凄いんだけど、最近思うのは、画作りにしろストーリーにしろ、
   とにかく『旧ルパン』はアイデアや描写が独創的であり、
   なおかつ魅力的だったんだ、という事。今になっても延々とパクられたり、
   「『旧ルパン』に戻ろう」と言われるのは、そういうわけでしょう。
   単にキャラクターが魅力的だったとか、作画がよかったとかいう事だけではない。
   宮崎(駿)、高畑(勲)、さらには吉川(惣司)、出崎(統)と、
   当時の東京ムービーとしては考えられるスタッフが全て投入されているよね。
   作画だけでなく、演出もいいところが多い。

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とベタ褒め。
カリオストロ』の緑ジャケット効果もあり、
「緑ジャケットこそ正統なるルパン三世」と考える人も多い。



そして、第二にはその話数の多さ。
旧ルパンが23話なのに対して、新ルパンは155話もある
とりあえず、宮崎駿145話『死の翼アルバトロス』最終話『さらば愛しきルパンよ』
だけ見とけばいいんでしょ?という人が多い。


かなり前に見たルパン三世ファンサイトには
「名エピソードの割合が第1シリーズは2分の1、第2シリーズは5分の1、第3シリーズは3分の1
などと書かれており、
155話もあるのに、名エピソードの割合は低いという、
なかなかに視聴者泣かせのシリーズでもあるのだ。


そこで、新ルパンの「見る価値のある話数」アニメスタイル等を参考に
ピックアップしていきたいと思う。


●まず浦沢義雄あり


現代のアニメオタクとしては、
新ルパンといえば、まず浦沢義雄である。


直近の『松太郎』でもその異質ぶりを発揮していた浦沢義雄
その脚本家としてのデビューが、
この新ルパンの68話『カジノ島・逆転また逆転』だ。


この話数のルパンは新ルパンらしい軽さを持っていながらも、
ここぞでのカッコ良さが光る、正統派。



正統派路線でいくのかと思いきや、
次に参加した78話『ロボットの瞳にダイヤが光る』からは、
その後の浦沢を彷彿とさせる不条理コメディが炸裂する。


この話数は旧ルパンから中心的に活躍している天才・青木悠三さんがコンテを担当しているのもポイントが高い。


浦沢脚本回は全て見ておいて損はないだろう。

68話『カジノ島・逆転また逆転』
78話『ロボットの瞳にダイヤが光る』
90話『悪い奴ほど大悪党』
92話『マダムと泥棒四重奏』
100話『名画強奪ウルトラ作戦』
106話『君はネコ ぼくはカツオ節』
117話『チューインガム変装作戦』
124話『1999年ポップコーンの旅』
128話『老婆とルパンの泥棒合戦』
138話『ポンペイの秘宝と毒蛇』
143話『マイアミ銀行襲撃記念日』

友永和秀さんの作画

次に見どころとなってくるのが、
カリオストロ』のカーチェイスでも有名な友永和秀さんの作画回。


カリスマアニメーターこと井上俊之

井上 まあ、友永さんのよさが発揮されていたと言えるのが、『新ルパン』だろうね。量もたくさんやっているし。

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と太鼓判を押している。


というわけで、上のアニメスタイルで言及されている話数をまとめておく

8話『ベネチア超特急』
14話『カリブ海の大冒険』
25話『必殺 鉄トカゲ見参』
92話『マダムと泥棒四重奏(カルテット)』
98話『父っつあんのいない日』


92話は浦沢脚本とダブルで楽しめる名エピソード


大塚康生さんの作画汗まみれ
旧ルパンやカリオストロ作画監督を務める大塚康生さん。
大塚さんは新ルパンにも参加している。


その様子は著書『作画汗まみれ』にも記述があり、
設立間もないテレコムアニメーションでなかなか苦労があったようだ。
ほぼ素人のテレコム研修1期生を率いて参加した72話『スケートボード殺人事件』については
私が担当した全作品の中で最低の作品になりました
というシビアな記述がある。
戦後の日本のアニメの父ともいわれる大塚さんの
全作品の中での最低」というのは
なかなか興味深い。


本の記述によれば
「動画チェックの大武正枝さん(直近では『となりの関くん』のキャラデザ)を泣かせていました」
というその研修生たちも、
新ルパンで数をこなして成長していきます。


新ルパンのテレコム回は、
テレコムという会社および研修生たちの成長を見る
という楽しみもあるのだ。


また、カリオストロをやった後のテレコム回については
前述の宮崎駿による2話数以外にも、カリオストロで助監督を務めた吉田しげつぐさんによる
151話『ルパン逮捕ハイウェイ作戦』
カリオストロの影響を受けた話数として言及されている。

72話『スケートボード殺人事件』
77話『星占いでルパンを逮捕』
82話『とっつあん人質救出作戦』
84話『復讐はルパンにまかせろ』
99話『荒野に散ったコンバット・マグナム』
105話『怪奇鬼首島に女が消えた』
151話『ルパン逮捕ハイウェイ作戦』
153話『神様のくれた札束』


●アニメ様365日
現代のアニメオタクに当時を伝える重要な資料、
WEBアニメスタイルの『アニメ様365日』
その中で、新ルパンに言及している回がある
http://www.style.fm/as/05_column/365/365_012.shtml


この中で、まだ出ていない回をまとめておく

時事ネタ
74話『恐怖のカメレオン人間』(74話)
93話『万里の長城インベーダー作戦』(93話)
94話『ルパン対スーパーマン』(94話)
111話『インベーダー金庫は開いたか?』(111話)


各キャラ名エピソード
58話『国境は別れの顔』
69話『とっつぁんの惚れた女』
85話『ICPO(秘)指令』
103話『狼は天使を見た』
108話『哀しみの斬鉄剣
112話『五右ェ門危機一髪』


石原泰三(三家本泰美)回
137話『華麗なるチームプレイ作戦』
148話『ターゲットは555M』

WEBアニメスタイル | アニメ様365日 第12回 『ルパン三世[新]』


時事ネタではほかにも81話『不二子! 男はつらいぜ』91話『時を駆ける少女』なんかもある模様。

●まとめ
挙げた話数はのべ約40話
最初に書いた
「第2シリーズの名エピソードは5分の1」という話、
あながちウソでも無さそうですね。


レンタルビデオでもかなりの高確率でおいてあり、
今はdアニメストアでも全話見られる
新ルパン。
厳選してみているのも良いんじゃないでしょうか。