出崎の断片収拾〜どろろと佐武市

ツイッターから

出崎演出は、出崎さんがいきなり発明したわけではない。
出崎演出は、真崎守さんと村野守美さんが演出の話数の
佐武と市捕物控」の影響下にあることを知る人は少ない。
同じ時期に出崎さんが演出を担当していた「どろろ」では、
のちの突き抜けた演出スタイルは構築されていない。
約2時間前 Saezuriから
Shinjukueyes

@Shinjukueyes そうですよね!やっぱり、出崎さんは佐武と
市捕物控の影響が強いですよね。村野守美さんの止め絵を
多用する演出などはかなり影響度が強く見えます。
約2時間前 webから Shinjukueyes宛
mizuikeya

佐武と市捕物控」は、少ないセル枚数という制限を逆手にとって、
劇画の見せ方を映像にした試みの初の作品。このスタイルの発明者
がオープニングと第一話のコンテ・演出を担当した真崎守さん。真崎守
さんと村野守美さん演出話数以外は酷いので、見る価値なし。
http://j.mp/hE6hfe
約1時間前 Saezuriから
Shinjukueyes

出崎作品には欠かせない、杉野明夫さんが村野村美さんの弟子筋で、
杉野さんは村野さんから特に「残像効果」について、教わったらしい。
これは、多分モンタージュ理論の事で…………寝なきゃ
約1時間前 Twitter for iPhoneから
mizuikeya

出崎作品に強い影響を与えているんじゃないかと思う人が自分の中には
もう一人いて、吉川惣治さんなんですが…………本当に寝ないとヤバい
約1時間前 Twitter for iPhoneから
mizuikeya

プラスマッドハウス川尻善昭から

川尻 (前略)『どろろ』では、北野さんの
   ちょっと硬質な百鬼丸のデザインとかが格好いいと思ったんだ。
   もう一方で、村野守美さんがデザインした『佐武と市捕物控』をやっていて
   これも滅茶苦茶格好よかった。
   それで、これからアニメーションが変わっていくんだ、
   アニメーションにも魅力的な分野が出てきたなあと思ったんですよ。
   僕は『どろろ』班にいたんだけど、『どろろ』班にいると、
   『佐武市』を観せてくれないんですよ(笑)。
小黒 といいますよ?
川尻 村野さんと北野さんが、2人とも手塚治虫の愛弟子なんですよ。
   同期で、もの凄いライバル意識があった。
小黒 あっはははは!なるほど。
川尻 だから、『佐武市』を観せてくれなかった。
小黒 オンエアをですか?
川尻 当時はビデオなんかないですから、放送でないと観られなかった。
   ラッシュにも呼ばれないし(笑)。
   画だけでなくて、演出も『どろろ』は杉井(ギサブロー)さんで、
   『佐武市』はりん(たろう)さん。両方のスタッフが対抗意識を持っていて。
   そういうのも面白かったですけどね。
小黒 その後の『あしたのジョー』はいかがだったんですか。
川尻 多分『どろろ』や『佐武市』の流れだよね。
   虫プロで手塚原作ではなく、ちばてつやの作品を映像化する。
   確か『どろろ』班で作ったパイロットフィルムがあったんですよ。
   それにダメ出しが出て、出崎(統)さん、杉野(明夫)さん達が
   パイロットを作り直して、その方向性でシリーズを作ることになった。


(補足:『どろろ』班で作ったパイロットフィルムも絵コンテ・演出は出崎統
 杉野氏は『佐武市』班だったので、ここで合流が発生し新たな方向性へと進んだ?)

どろろの出崎演出

アニメスタイル第8回イベント 出崎統NIGHT3」

(中略)

家なき子ビタリスがレミを守って、雪に埋もれるシーン、出崎演出どろろでも同じシーンがある。


(中略)


松園さんが、東映的演出方と、出崎演出法との違いを熱く語る。
「たとえば、裁判が終わってビタリスが出て来る。ここで、ビタリスのアップ、見つめるレミをアップがくり返し続いて、馬車が走り出してから、やっとお互いの位置関係が示されるところ。東映的(高畑的)では、ビタリスが出て来てレミを見つけた時点でまず、二人の位置関係を見せてから、演技が始まる」「どろろの母が、おかゆをもらうのに素手を差し出す。東映的なら、ここで、素手おかゆを入れられたら、熱い、苦しい、という表情をかかないと気が済まない。が、出崎演出は、おかゆをいれてもらってから、どろろに食べさせるまでずっと顔が出ない。どろろおかゆを食べ終わって、どろろが母のやけどに気がついてから、やっと、にっこり笑った母の顔をだす。」


出崎さん「そのシーンの前に、おかゆを入れたら、あつくて手がただれると坊さんに言われている、それでも構わないといって、手を差し出しているのだから、熱い、とか言ったら、おかしいじゃないか。」

http://f1.aaa.livedoor.jp/~yabuki/kako/kako46.html


アニメスタイルの金春さんのどろろ

 総監督の杉井ギサブロー氏、演出の出崎統氏、高橋良輔氏、富野喜幸(由悠季)氏、脚本の鈴木良武(別名、五武冬史)氏といった方々は、当時みな20代半ばから後半だった。今なお現役で活躍中のクリエイターたちの若き日の仕事は、それぞれに見応えがあり、その後の作品との共通点がほの見えたりして、興味深い。


 一例をあげると、筆者は今「雪の女王」に参加しているのだが、打合せのたびに、出崎監督が登場人物の感情の描写をいかに大切になさっているかを思い知らされている。「どろろ」第1話の景光のおぞましさ、どろろのたくましさと優しさ、第6話のどろろの母の愛などを見れば、きっとわかるはずだ。おなじみの3回パンやハーモニーはなくても、出崎演出が確かにそこにあると。

http://www.style.fm/as/06_review/dvdnavi07.shtml


データ原口氏の佐武市解説

原口 今回の解説書でも触れたんだけど、りんたろうさんの記憶では、江ノ島方面に朝早くでかけていったんだって。で、後の初代マッドハウス社長になる、おおだ靖夫さんに草鞋を履かせて、波打ち際瀬で一騎打ちしながら走る足を、実写で撮ったらしい。それで撮った素材をアニメにはめ込んで使っている。
 一方、ゼロはちょっとしたところに、花火だとか雨だとかの実写の映像をこまごまと入れているんだよ。だから、ゼロの方が、本来相容れないような映像の要素を組み合わせるという実験に、積極的だった。虫プロの方はどちらかというとレイアウトとか、作画のタイミングとかカット割りという点での実験性が強くて、基本的にはアニメであろうとしているみたいなの。
 そういう意味でも、両社のリアルの捉え方の違いとかスタイルの捉え方の違いがあって、いい意味で競作してる感じはした。以前は思い込みで虫プロの方だけがスタイリッシュで、スタジオ・ゼロは普通に作っていると捉えていたんだけど、そうではないんだ、と。

http://www.style.fm/as/13_special/netsu_050720.shtml

原口 えーとね、虫プロ側の制作話数が2本上がるか上がらないかぐらいの時に、放映が始まるんだけど、始まって間もないところで村野さんはキャラクターデザインを降りているんだ。村野さんは「馘になった」と言っているんだけど、そのへんの詳しい事はよく分からない。1本目、2本目では、村野さんはキャラクターデザインもやって、同時に作画監督にあたる立場にもあった。で、その時すでに杉野昭夫作監補佐みたいな立場にいたんだよ。だから、村野さんが抜けた時点で、それまで村野さんの補佐をしていた杉野さんに、仕事内容のすべてがバトンタッチされた形になった。杉野さんはキャラクターデザインと、同時に作監も引き継いだわけ。


(中略)


 でね、その9話「恐怖の島送り」は、村野守美の演出回なんだよね。村野さん曰く、自分はある日、キャラクターデザインを降りろと言われて、馘になった。でも、生活はしなきゃならない。それで、りんたろうから演出をやれと言われて、そこから演出をやるようになった、という事なんだ。ただ、実際には『わんぱく探偵団』で演出回が1本あるから、厳密には初演出ではないんだけどね。
 もうひとつ、村野さんの弁によれば、キャラクターデザインだけじゃなくて、今風に言えば、アクションデザインみたいな感じの事をやってたって言うんだよね。つまり、殺陣の見せ方とか作画のタイミングの約束事を設計するみたいなところに噛んでいた、と。
小黒 ああ、それはありうるね。
原口 ええっ、どういう事?
小黒 村野さんって、後の『カムイの剣』(劇場・1985)でも、カムイ無拍子なんかのアクション設定を描いているみたいなんだよ。一度、それらしい資料を見た事がある。

http://www.style.fm/as/13_special/netsu_050721.shtml

原口 あとね、9話や14話は、作画枚数をもの凄く少なくするという実験をやっている回でもあるんだよ。村野さんの記憶だと9話は1200枚で作ったそうだし、りんたろうさんの話だと14話は800枚で作ったと言うんだ。レイアウトやカメラワークが緊張感を維持しているので、手を抜いているような感じはまったく受けない。その中で、雪だとか、風だとか、それから眼だけがちらっと動く。例えば『(たばこ1本のストーリー)ハートカクテル』(TV・1986-1988)に近いスタイルかな。動くイラストみたいなかたちで情感を狙って、それをある程度確信して作っている。りん、真崎、村野の中でも、村野は突出してそういう事をやってた感じがするね。
小黒 あの頃、りんさんと真崎さんというのは、どういう関係なの?
原口 『ジャングル大帝』の時には、りんたろうチーフディレクターで、真崎守は役職としては制作担当でね。りんたろうの片腕というか、よき相談相手みたいな感じだったらしい。『わんぱく探偵団』でも同じ役職で、りんたろうの目指す演出をいちばん理解し、制作面から支えてくれていたのが真崎守だったという事だと思う。で、りんさんからすると、真崎さんから演出をやりたくてしょうがない、という気持ちがひしひし伝わってきたというのね。それで、『佐武と市』をやる時に思い切って演出やったら、という事になった。オープニングのコンテも真崎守なんだよ。


(中略)


原口 今回、コンテを直にりんさんに見てもらったんだけど、第1話の前半が真崎守で、後半はりんたろうというかたちで分担しているんだよ。で、その後の「般若」「死を呼ぶ子守唄」「涙の逆手斬り」の場合は、コンテは全部真崎さんで、りんさんは部分修正しているだけ。連名になっていても、実際にコンテを描いているのは真崎守である率が圧倒的に高いんだよ。りんさんが言うには、当時の2人は凄く感性が似ていて、時代劇をモンタージュ的に場面を作っていく事などについても、同じように考えていた。だから、おまかせでも、真崎守はりんたろうの望むようなやり方でコンテを切っていた、という事らしい。りんさんは監督として、脚本やコンテ、音響などに目を配るのに忙しくて、自分でコンテを切る暇はあまりなかった。その分、真崎守が乗りに乗ってコンテを切ってたみたい。


(中略)


裏を裏を採ってないんだけど、林政行が演出の回は、恐らくジャガードがやってて、荒木(伸吾)さんも描いていると思うんだけど、結構、凄い作画があるよ。

http://www.style.fm/as/13_special/netsu_050722.shtml


個人的まとめ

どろろ』の心情演出+『佐武市』の映像演出
          ↓
     『あしたのジョー』の出崎演出

http://d.hatena.ne.jp/mattune/20101209

ネットは凄い情報量だけど、
やっぱり整理が大変だなぁ