ウテナについて思う事


諸君、私は少女革命ウテナが大好きだ


でも、じゃあ少女革命ウテナの何が大好きなのか。


ウテナの物語的なテーマというものは
あの当時としては新しく、今となっては古い。


ウテナのテーマは誤解を恐れずに言えばこの二つ
1、自立
2、外部への志向


これはセーラームーンへのアンチテーゼであり、
かつエヴァンゲリオンのアンチテーゼでもある。
これを1997年の時点で打ち出したのは
エヴァ以降という括りの中では先駆けであったと思う。


00年代以降は、
「管理社会はダメだ、安全な管理よりもたとえ辛く困難でも外に出て自分の力で生きていこう」
みたいな作品が増えていって、
アニメもラノベもシリアスなのはそんなのばっかになった


2004〜2007あたりに「百合アニメブーム」になったのも
割とここらへんの影響かなと思っていて。
反管理社会とか自立とかやる時に、
「同性愛者」っていうのはぴたっとくるんだよね。
社会にとってのマイノリティだし、
「男性に依存する女性」みたいなものを否定することで自立も描けるし。
そこらへんも、ウテナは先駆けていた。


でも、ウテナはパイオニアであることは素晴らしいが、
テーマに関しては10年以上の時を掛けて、
やはり古くなったと思う。
例えば自立というテーマにしても
「じゃああんたら二人だけで生きていけるの?」
って言われるとどうしようもないわけで。


そういう意味では、舞HIMEのラスト、つまり
「他人に依存してばっかでもいけないけど、やっぱり人間は一人では生きていけないよね。
外に出るって言っても、学生時代を大切することも重要だよね」
って方が、地に足が付いた等身大の結論だなって気がするし。


それで、今ウテナを見た時にそれでもやっぱりすげぇと思うのは、
音も含めた映像としても質であり、
シリーズの構成なんだ。


音楽一つとっても、ウテナ以降にああいう試みはないわけだよね。
七実回、いわゆるギャグ回にしたって、
ああいうのを入れたりっていうのはまずない。
今やったら間違いなく最初のギャグ回では
「世界観がわからない」
「作風と合わない」
「こういうアニメとは思わなかった」
「奇を衒ったことをやってるだけ」
こういう感想で埋め尽くされるだろう。
でも、ギャグ回あってのウテナであり、
だからこそ作品に広がり出てくる。


キャラクターのパーソナリティや世界観は矛盾したって良いはずなんだ。
だって、現実の人間も世界も大抵は矛盾を含んでいるわけですから。
「上品なキャラ」で通ってる奴だって頭の中じゃあ何考えてるかわからんし、
日本だからってカンガルーが暴れてることもあるかもしれない。
そんなのわからんじゃない。


でね、こういう作品の特性がまた
「自立」と「外部への志向」を表現していて。
制作者自ら実践しているというかね。
視聴者を含めた他人からひっ付けられた「キャラ」に引っ張られる必要もないし、
「世界観」という枠にとらわれる必要もない。


テーマだけじゃなく、作品自体が自立しており、外部性がある。
そういう意味では、
富野のガンダム庵野エヴァも出崎も
みんな、作中語られるテーマと作品自体が同化していた。
「こういうテーマをやるからには作品そのものをこうしよう」
という気概。
サトジュンのカレイドスターもこれだね。


そういう作品にこそ、俺は魅力を感じるのだろう。