不要なものなんてなく、傑作は必ず生まれる。


ちょっと前に、神山さんの予言の記事を書いた。
今のアニメ業界では「リアリズムの追求」あるいは「現実主義」は
もはや、時代遅れのようだ。
今は、表現主義がブームだ。
表現の追及。


では、ブームでないものは不要なのか。


神山さんの
「アレルギー」という言い方は非常に適切で使いやすい言葉だ。
神山さんは自身について「アレルギーがある」と語ったが、
同じように「表現主義」にアレルギーがある人は確かにいる。


また、反対に「現実主義」にアレルギーがある人もいるだろう。
現実主義アレルギーが顕著な人物しては
柳沼和良さんを例に挙げることが出来る。

ただ、大半の人は別にどちらでもよかったりもする。
どちらだろうと、出来上がってくる傑作を見て感動するのみ。
どちらでもいいのだ。


だからこそ、非ブームの間にその灯火を守るのは「アレルギー」持ちの人間の役目となる。
どんなに売れなかろうが批判されようが、
技術を絶やさぬようにする。
調子に乗って根絶やしにしちゃ駄目。


そして、表現主義と現実主義は同居する。
出崎監督は、表現主義の旗手として語られることが多い。
しかし、例えば彼の「回り込み」の表現などは、
「実写」的なものである。
小林七郎御大の言うとおり、「回り込み」は実写でやってもインパクトは薄く、
むしろ実写的なことをアニメでやるからこそ、
そのインパクトが感動を呼び起こす。


リアリズム全盛期に見ても出崎統作品は面白かったし、
今みても劇パト2は面白い。
人狼とか柳沼さんは嫌いかもしれないけど。
柳沼さんが押井作品の中でもビューティフルドリーマーは好きっていうのは
いかにもだよなぁ。
押井さんはぶっちゃけどっちにもアレルギーがないから。
同居型。
「今は現実主義ブームだから、現実主義でいくわ」くらいの感じでしょう。
天使のたまご」あたりで表現主義の衰退に気づいて、
80年代末期には完全に鞍替え。
次の世のブーム切り替えが「スカイクロラ」の頃かな。
多分、気づいたんだろうけど、もう切り替えなかったよね。


今敏さんは最後まで「アレルギー」を克服できなかった印象。
「牛乳は体に良いから飲んだ方がいい!でもアレルギーがあるから・・・」
って感じかな。
なんか牛乳を温めたり、ヨーグルトにしてみたりしてたけど。


だからさ、駆逐しちゃ駄目なんだ。
多分、これから10年くらいの間は、
「アニメなんだから、実写には出来ない表現をやるべき。
実写のようなアニメは屑だ!」
みたいな論調になると思うよ。
かつて表現主義
「奇を衒ったような表現をしてるようなものは邪道、地に足のついたアニメこそが王道」
みたいな感じに蔑まされてたようにね。


でも、もしアレルギーがないのなら覚えておいてほしい。
どちらも素晴らしいものであり、それは背反するものではないと。
もしアレルギーがあるならば、雌伏時を乗り越えてほしい。
ブームはいつか必ず終わり、
傑作は必ず生まれると。