輪るピングドラム14話〜ナナメの美学〜
世の中のものは「真っ直ぐ」であることが良いことだと思われている。
それの証拠に、このブログだって真っ直ぐの線で構成されている。
真っ直ぐは普通。
そうであるがゆえに、
「ナナメ」というのは、人の心をかき乱し、時には興奮させる。
そのもっとも有名なものが、誰でも知っているこれだ
ピサの斜塔は傾いているがゆえに、塔の機能としては欠陥品であるにも関わらず
価値があり魅力がある。
この「ナナメ」の効用を存分に発揮する演出家たちがいる。
アニメにおける「ナナメ」演出は枚挙に暇がない。
例えば過去のキャプを流用すると
こんな感じ。
出崎さんの見事なナナメっぷりは今更説明を要しないが
細田守こと橋本カツヨも
「縦位置と横位置の徹底」という演出スタイルが特徴的に語られることが多いが、
ここぞという時はきっちり「ナナメ」を使ってくる。
この文脈で言えば、最近いわれている「シャフ度」なる代物も
ナナメ演出の一つといえる。
新房シャフトの記号化すしつつあるナナメ演出に対して、
有機的にナナメ演出をくみ上げていくことに定評のある演出がいる
それが「山崎みつえ」さん
「けんぷファー」の10話は「ナナメ演出」を堪能するのに非常に適した
演出アニメであった。
今回のピングドラムもなんと言っても「ナナメ演出」の冴え渡りが印象的だった。
もちろん、「山崎みつえだからナナメってくるだろう」という、
一種のバイアスが俺に掛かっているという部分もあろうが、
例えば、「ナナメ」という切り口で記事を書いていない
おはぎさんのブログのキャプを見ても今回の「ナナメ」っぷりが一目瞭然
http://nextsociety.blog102.fc2.com/blog-entry-1634.html
山崎みつえさんはナナメ演出を多用して
「気味の悪さ」「奇妙な空気感」を醸し出す。
視聴者の感情へとジワジワと揺さぶりをかけてくる。
「ジワジワ」は山崎みつえさんのキーワードと言ってもいいかもしれない。
ナナメ演出に加えて彼女が得意なのが「ジワジワPANUP」
ナナメとジワPANUP
けんぷファー10話だと
ここらへんとかね、非常に巧い。
ナナメ演出も、ただナナメのレイアウトを配置しているだけではない。
ナナメを際立たせるための「シンプルな構図」もしっかりと容易している
これなんかは、真ん中の線の「真っ直ぐさ」を魅せるためのカット
ここらへんは縦位置と横位置のシンプルなカットを積み重ねている。
そしてそこからの
この2カット。
痺れる。
「輪るピングドラム14話」にも「けんぷファー10話」にもいえることだけど、
女の小気味の悪さを、ここまで全力で演出しちゃうっていうのが良いよね。
そこらへんはまさに女性演出家ならでは。
男がやるとどうしても、手心を加えちゃうからね。
そういう意味では、山崎みつえさんはまさに幾原監督が求めた人材だったのでしょう。
ピンドラとウテナの決定的な違い、その鍵は「山崎みつえさん」にあるかもしれない。