声優を聴く三つの要素


アニメにとって欠かせない要素、声優。
この声優を視聴者としてどう見れば、いや聴けばいいのか。
その物差しを考える。


最近の声優を計る物差しは
・容姿
・歌唱力
・(ラジオやイベント等における)トーク


などという、およそアニメにおける声優の役割と無関係な要素が使われている
声優が顔がよくてもアニメには関係し、歌唱力もトーク力も声優の本業に必要な能力ではない。
にも関わらずこのような要素で声優を計りにかける
「声優オタク」が多く居る。
その結果
「声優は究極的にはアニメに出演する必要はない」
などという支離滅裂な言説すら飛び出してくる。


ここで、私の考える
「視聴者が聴く上で重要な声優の要素の大区分」を提唱しよう。


1、声質
2、発音
3、演技力


もちろん、「演じるが学ばねばならないこと」はもっと多く存在するが、
分かりやすい部分のみ抽出した。


○まず、1の声質。
これはもっともわかりやすいもので、
現在も「声質声優」などという言葉が声優オタクの間で使われたりもする。


声質という言葉自体は、歌手について使われることが一般的でしょう。
主に
・音域
・周波数
が声質の変数となります。


周波数については「f分の1のゆらぎ」なんかが有名ですね。
独裁者ヒトラーダウンタウンの松本、小泉元首相なんがもっているという、
「人を惹きつける」ゆらぎです。
まあ半分疑似科学ですけど、事実彼らのしゃべりは人をひきつけているわけで、
そういう声の「周波数」というのは声質を左右してはいるでしょう。


まああんまり定量的な分析ばかりでも仕方がないので
例えば、声優オタクの声質の感想サイトとしては
http://www.geocities.jp/inutorikoya/
なんかは興味深いです。
http://www.geocities.jp/inutorikoya/yuzu/tekigou_women.html
なんかは評価として正しいかはともかく、
声優オタクの先人の「感想」としては価値があるでしょう。
結果としてこう受け取られている、ということです。


○次に2の発音
発声ではなく発音です。
発音でもなんとなく通じると思いますが、
これの小区分としては
・アクセント
・イントネーション
・リズム
と分けられます。


☆アクセントは一番一般的な言葉でしょう。
英語なんかだと「アクセント記号」なんてのがあったりしますね。
単語単位での音の高低。
「方言」というのはアクセントが極端に出た結果のものですが、
声質の「ゆらぎ」同様、アクセントにもゆらぎがあり、
これが個性となります。
同じ標準語といってもみんな完全に同じではないですよね。
育った環境や使っている言葉にも左右されます。
方言を使っていて標準語を後で身につけるというのと
元々を標準語を使っているというのとでは当然別物になるでしょう。


☆イントネーション
次にイントネーションです。
アクセントとイントネーションは混同して使われることもありますが、
アクセントが「単語単位」だったのに対して、
イントネーションは「文単位」です。


声優は単語のみをしゃべるということはあまりありません。
文をしゃべるわけですから、アクセントだけでなくイントネーションも重要になる。
逆にイントネーションがどうしようもない(魅力がない、コントロールが利かない)
声優には「片言キャラ」が宛がわれるわけですね。


☆リズム
アクセント・イントネーションが音の高低だったのに対して、
こちらは音のおき方です。
作画オタク的には「タイミング」と言っているものです。
そう、人間の動きがタイミングシートで表されるように
人間の声もタイミングシートであらわせるはずなのです。
その一端が、スポッティングやリップシンクですね
(参考:http://www.style.fm/as/05_column/katabuchi/katabuchi_023.shtml


つまり、同じような声質だとしても、
タメツメのある声とベタ打ちの声ではまったく別物というわけですね。


○演技力とは
さて、ココまで来てやっと演技力。
というか、ここまでくれば演技力の正体が大分見えてきたのではないでしょうか?


演技力とは、
・解釈力
・1と2のコントロール
の二つが大きな要素となります。


まずは解釈力。
これはわかりやすいですよね。
あるキャラクターをどういう人間だと解釈するか
そのシーンをどういうシーンだと解釈するか
どういう感情なのか。


解釈に正解はありません。
もちろん、原作者の解釈、視聴者の解釈、脚本家の解釈、演出家の解釈、音響監督に解釈
そういったものはあります。
ただ、それらも相対的な解釈であり、
監督の解釈を「超えてきた」という発言も多く存在あります。


それに対して、コントロール力の方はある程度「正解」があるものでしょう。
つまり、解釈したものを「表現できるか」という部分になってくるからです。
これも絵に例えると良いでしょうか。
仮に素晴らしいデザインを「想像」できたとして、
それを絵に出来るかどうかはまた別ですよね。


つまり、解釈力はWhatでありコントロール力はHowであるとも言えるでしょう。



●これを踏まえて
声優を評してみるとこんな感じになります。


俺が好きな声優は発音に「タメツメ」があってイントネーションに個性がある声優。
最近はそういう声優は減ってきていて、「ベタ打ち系」が多いが
本多真梨子さんなんかは久々のタメツメ系大物声優という感じがする。
「日常」である程度注目を集めたようで良かった。


とか


沢城みゆきさんは演技力があるというが、最近はいまいちだと思う。
なぜなら、「解釈力」がパターン化してきてしまっている。
「こういうキャラはこう演じる」っていうパターンが。
もちろん、最近のアニメが似たようなキャラばかりを作り、
それを沢城さんに演じさせているというのも問題だが、
それでも毎回違うキャラと違うシーンなはずである。
にも関わらず同じ解釈をしている。
しかも、声のコントロール力が抜群だから、本当に毎回同じものを聴かされることになる。
これならもうちょっとコントロールに難があって、ゆらぎがあった方が面白い



なんてね。
自分の好きな声優をいち早く察知して自覚するのには
色々と使えるんじゃないかと。