元作画オタク的に見る、ラブライブ7話のチョップ


インスパイア元はアルファベータさんの
http://d.hatena.ne.jp/alphabate/20130224/1361685037
これ



アルファベータさんはこれを寸止めと言ってるわけですが、
作画オタク的にはこれを寸止めと言ってしまうのは
ちょっとアニメーターが可哀想かな、と思ってしまう。


ちょっとしたおさらい。
アニメというのは、連続した絵を次々と見せることで
動いているように見せます。


その次々の単位は、
最小でも1秒間に24枚(コマ)。
リミテッドと呼ばれる、いわゆる日本のアニメは
3コマ作画として、3コマに一枚の絵を見せている。
つまり、
1秒間に8枚の絵というのが日本アニメの基本だ。


そして、1秒間に8枚の絵を見せるとしてどんな絵を見せるか。
もっとも良く使わせる手法が
「ポーズトゥポーズ」
ポーズの絵からポーズの絵へと繋いでいく手法


例として、基本に忠実なドキドキプリキュアのアクションを見ると




ポーズで動きを繋いでいって、
最後に「衝突の絵」を入れる
これが基本。



しかし、この基本概念に対するカウンターが存在します。
それは、
「実際の動きにおいて衝突の瞬間の時間なんて8分の1秒もなく、
それはコマとして絵に出るとは限らない」
という考え方です。
実際、リミテッドの基本的な描き方では、
8分の1秒間、衝突の絵が続くわけですが、
ボクシングの実写映像などを見ても、
インパクトの瞬間は1コマ(24分の1秒)もなく、
コマ送りしても出てこないこともあります。
(実験バラエティ番組などで「超スローカメラ」とか言ってるのは、
その「出てこない部分」を細かくして見れるようにしたカメラ。)


24分の1秒以下の時間をどうやって表現するのか?
それがアニメーターの命題となります。
そしてそれに主に用いられているのが、
「衝突の絵を敢えて描かない」という手法です。
実写のビデオをコマ送りして写らないのだから、
アニメでもそれは勿論写らないだろう、と考えるわけです。
絵と絵の間でそれが起きていることを
見ている人に想像させれば良い。



では、もう一度ラブライブに戻りましょう



まず、このチョップの動きは3コマではなく、1コマで表現されています。
つまり、上の絵と下の絵の間はアニメの限界の24分の1秒。
しかし、今表現したいのはその上「48分の1秒」の世界。


そこで、ここを担当したアニメーターは
インパクトする瞬間の絵を入れなかった。
インパクトする一瞬前のと一瞬後の絵を見せることで、
その間の絵(48分の1秒の絵)を想像させることを選んだのだ。
そして、結果、インパクトの瞬間の絵はないのに、
凛の受けた衝撃が画面から伝わってくる。


というわけで、ちょっと作画オタク的にラブライブ7話のチョップを見てみました。
インパクトの瞬間の絵がないから寸止めだ」
という考え方も、
日本のリミテッドアニメ基本原則的には、正しいというか、
そういう風に思われないために
多くのアニメでは「インパクトの瞬間の絵」を入れていたわけですが、
それはもはや生の動きではなく記号としての動きです。


その記号としての動きを超えるため、
普通のアニメであれば、3コマで事足りるようなチョップを
1コマで動かし、かつインパクトの瞬間を見せないような手法まで使っている。
そういうことがアニメの動きの進化、そして映像としての説得力へと
繋がっていくのです。



P.S.ここ、目パチも凄く凝ってる。
  カット頭で目を閉じてて3コマで開けて2コマで閉じて次のコマでインパクト直前の絵。
  細かい絵の入れ方してる。
  ここをわざわざ「チョップ」にしたことと言い、コンテ演出の酒井さんの仕事なのかな?