『映画けいおん!』を二倍速で見て楽しんだっていいんだ
先々週、藤津亮太さんのレビュー講座に行ってきました。
題目は『映画けいおん!』
『けいおん!』をあまり楽しめなかった俺としては、
かなりの難題。
『映画けいおん!』についても、
水池屋さんが「素晴らしい。でも面白いかどうかは別」と言っていたので、
この機会まで見ずに来た。
藤津さんにも「良さがよく分からない作品だった場合にどうしますか?」
と聞きましたが、
「何回も見るというのは手でしょうね。10回とか。見れば見ただけの蓄積になる。」
との答え。
というわけで、見てみました。
何回も。
そして、確かに得られるものが2つありました。
1つは「ラスト15分は凄く面白かった」ということ。
もう一つは「『映画けいおん!』は二倍速で見ると面白い」ということだった。
レビューは1つ目の「ラスト15分」を軸に、書きました。
そして、偶然にもtatsuzawaさんのところの同人誌のテーマが
「映画けいおん!」(http://www.hyoron.org/20140321212914)だったので、
レビュー講座で受けた指摘を元に、書き直しをしてtatsuzawaさんに送付。
なので、今回はブログには改稿を載せないが、
代わりにもう一つの発見
『映画けいおん!』は二倍速で見ると面白いことについて書いておこうと思う。
○二倍速で見ることは作品に対する冒涜か
友人のこの「二倍速で見ると面白い」という話をした時に出たのが、
「それは作品に対する冒涜ではないか?」という事だった。
そう考える人ももちろんいるだろうとは思う。
しかし、いわゆる時間芸術で「速さ」というものは絶対的なものだろうか。
それでまず思い浮かんだのが、
グレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲だ。
細田版時をかける少女でも劇中で使われており、
聞き覚えのあるアニメファンも多いはず。
上の動画でも説明されている通り、
それまで「ゆったりとした速度」と「繰り返しの多さ」から
飽きる1時間以上の曲と認識されていたゴールドベルグ変奏曲。
それをグレン・グールドは2倍近いスピードと繰り返しの省略で半分の30分ほどで
弾ききった。
これにより、グレン・グールドはピアニストとしての地位を確立して、
それと同時に、バッハの再評価ともなった。
クラシックですら、こういった速さの変更はあるのだ。
○能のスピードの変化
日本でも似たような事例がある。
それは日本の伝統の能だ
http://www.the-noh.com/jp/trivia/094.html
能は実は室町中期には現在の半分の時間で演じられていた。
それが時代を経るごとに「遅く」なっていったのだ。
グレン・グールドの例とは逆だが、
これも「速度変更」の一例である。
○『映画けいおん!』を二倍速で見るのは文化の習熟への道
こう見てきたように、音楽や演劇の一種である能でも、
速度の変更は行われてきた。
それが文化の習熟の過程とも言ってもいい。
『映画けいおん!』は二倍速で見てもいい。
それは冒涜ではなく、それで新しい魅力を発見することこそ、文化の習熟なのだ。